輸液の基礎知識

・とても分かりやすい本

・7章の尿細管については省略

取り組む前の基本

細胞外液として、生食・ラクテック・ソルアセトFなど。
通常は500mLを選択し、投与速度は80mL/hが無難。

救急患者通常500mL、80mL/hが無難

(速さは、普段の飲水ペースくらいに相当)
細胞外液:
 生食
 ラクテック
 ソルアセトF
腎不全患者通常500mL、40mL/hが無難
(*NaとKの投与速度に注意する)
1号液(開始液):
 ソルデム1
 デノサリン1
 ソリタT1
食事が摂れない場合通常500mL、80mL/hが無難3号液(維持液):
 ソルデム3A
 ソリタT3
高Na血症通常500mL、80mL/hの開始が無難5%ブドウ糖液
なお輸液のうち、500mLとか入れる成分を「メイン」と呼称することがある。

・輸液を考えるときは単位はmEqだが、これを栄養に換算するときはgに変換する必要がある。p75
NaCl 1g = Na+ 17mEq
KCl 1g = K+ 13mEq
Na 1g = Na+ 43mEq
K 1g = K+ 26mEq

器具の名称

・「クレンメ」についているローラーを動かして「点滴筒」からポタポタ落ちる液量を調節する。
*成人の輸液セットでは、20滴で1mLになる。=例えば80mL/hとしたいときは、27滴/分で落とす。
(小児用は60滴で1mLなので3倍速く落とすと同じ速さとなる。)
**緊急時は「1秒1滴」で開始と覚えてよい(やや早め。なので後で調整する)

2)ポンプ

・クレンメより正確。設定と表示は「予定量=合計で何mL投与するか」と「流量=1時間で何mL投与するか」。
・輸液が必要な代表例=K補正(生食にKを混ぜて)・3%食塩水の投与・GI療法・CV栄養・化学療法

3)シリンジポンプ

・さらに正確(数mL/hなど)。ダイヤルを回して設定する。
・具体的にはインスリン持続静注・ノルアドレナリン持続静注・周術期

針の選択(成人の輸血では20G。緊急の大量輸液では18G)
・3種類あり、留置針・翼状針・直針
①留置針は内針を後で抜いてカテーテルを血管に留置するやつ
②翼状針は短時間用(クリニックで1時間とか)
③直進はただの針(翼のないやつ。採血とか)

所見

血管内脱水→頻脈、Capillary refill timeの延長(2秒以上)、ツルゴールの低下(2秒以上。高齢者では5秒以上に延長すると”ツルゴール低下”とする)・口腔と腋窩の乾燥

細胞内脱水=間質の浸透圧(正確には張度)で代用され、さらに間質と血管内の移動は自由なので、血液の浸透圧を指標にする。(例:血液の浸透圧が低い時、細胞が浮腫になっていると考える)

輸液の組成

細胞外液生理食塩液(「水」ではない!)
 Na 154, Cl 154 mEq/L
ラクテック(=乳酸リンゲル)
 Na 130, K 4, Ca 3, Cl 109, L-Lactate 28
ソルアセトF(=酢酸リンゲル)
 Na 131, K 4, Ca 3, Cl 109, Acetate 28
(~リンゲルではKが4mEq/L入っていることを覚える)
(マイナスイオンは他にあるのでClは生食より低め)
(乳酸と酢酸は緩衝剤。なので濃度は重要でない)
(大量輸液の際はClが尿細管に作用し尿量を減らすため生食の方がよくない説もある)
(腎不全においては、アシドーシスと高Kをややきたしやすい生食の方がよくない説もあり)
(ソルアセトFはFree。ソルアセトDはDextrose(ブドウ糖)入りの意味)
細胞内に水補充
(5%ブドウ糖液)
・電離しないのでmEqでなく%表記。
 5%で浸透圧は血漿と同じ(5%をゴプロと呼ぶことがある)
「自由水」であり、2/3が細胞内へ入るイメージ。
1号液(開始液)デノサリン1
 500mL中に 12.5gブドウ糖、38.5mEqのNa、38.5mEqのCl
ソルデム1
 500mL中に 13gブドウ糖、45mEqのNa、35mEqのCl、10mEqのL-Lactate
(5%ブドウ糖と細胞外液を1:1で足したものと覚えたらよい
 ただしKは含まない)
(ブドウ糖液は自由水なので、1号液の分布では細胞内は1/3くらい。
3号液(維持液)Kが入っていることが特徴(細胞外液のK:4mEq/Lの5倍で30mEq/L)
 500mL中に、21.5gブドウ糖、17.5mEqのNa、10mEqのK、17.5mEqのCl、10mEqのL-Lactate

原理の理解

浸透圧の推定値2x(Na + K)+ ブドウ糖/18 +尿素/2.8 (mOsm/L)
(実際のより正確な測定値は10ほど増える。その時単位はmOsm/kgで書く)
(例えばアルコールは浸透圧を上げるが上記推定式には含まれていないので中毒の際は注意)
張度
(=有高浸透圧)
細胞膜は厳密には半透膜ではなく、尿素を通過させる(→こちらが実際に輸液を考えるときに重要)

推定式:2(Na + K) + ブドウ糖/18 (mOsm/L)
→約293mOsm/Lとかになる。
各輸液の張度生食:308mOsm/L
ラクテック(乳酸リンゲル) 268mOsm/L
ソルデム1(1号液) 324mOsm/L
ソルデム3(3号液) 349mOsm/L
5%ブドウ糖液 278mOsm/L
*上記すべて等張液という。注意!
(一方で高張液の代表は3%食塩水(1000mOsm/L))
*基本的には蒸留水(低張液0mOsm/L)などは使わないと覚えておけばよい。溶血する)
水の分布を
考える
*溶血させない範囲に張度をとどめることは必須であるが、重要なのは水の分布
 →だからブドウ糖は除いて計算する。
水の分布を考えるときの張度の推定式:2(Na + K)

生食:308mOsm/L
ラクテック(乳酸リンゲル) 268mOsm/L
ソルデム1(1号液)180mOsm/L
ソルデム3(3号液)110mOsm/L
5%ブドウ糖液 0mOsm/L
*以上より1号液・3号液・5%ブドウ糖液は低張電解質液であることがわかる。
(低張液と低張電解質液は定義が異なるので注意すること!)

実践

腎不全患者のライン確保1号液(開始液)40mL/h
*うっ血&K排泄ができないことを気にする。
→自由水を混ぜさらに速度を遅くすることでうっ血予防&Kフリーである、1号液を採用。
・小児もうっ血しやすいので同様の考え方。
・いずれにせよ血管内脱水が明らかであれば細胞外液が優先される。
食事が摂れない場合3号液 これが1日の栄養と水分に相当していると解釈しておけばよい。
(Kの1日摂取量が40~80mEqであることは暗記しておくのがよい。
食塩は1日5gならNa+は85mEq →3号液投与の際はK 40mEq, Na 80mEq

*ビタミンB1などを忘れないこと!!(製剤としては「ビタメジン」が代表)
 ブドウ糖は高濃度では静脈炎をきたすことを覚えておく。

【水分必要量について】
・代謝水は、ブドウ糖の代謝により「増える」水分のこと(200mL/dayくらい)。
→水分必要量=尿量+不感蒸泄+発汗+その他水分喪失ー代謝水
なお不感蒸泄は皮膚から600mL、呼気から300mL、尿量は1300mL程度で考える)
(尿量が多すぎるのは輸液が多すぎるとき、と気づくこと。少ない時は逆)
(人工呼吸管理中は呼気による喪失はゼロ)
高Na血症5%ブドウ糖液を80mL/hで。(蒸留水を入れないこと!!!)
・ちなみに50%ブドウ糖液は低血糖(意識があれば経口。意識がない場合は、緊急性が高いので末梢静脈投与してよいが、通常は浸透圧が3倍以上のものは末梢から投与してはいけない)
(ただし、血管内脱水があれば細胞外液を80mL/hで。)

20%ブドウ糖、10%ブドウ糖液(主に回復後の低血糖予防用)もある。p84
40%ブドウ糖液、70%ブドウ糖液もあり、これらはCV栄養に混ぜるのが通常。

個人差があるが150mEq/L以上で無気力や眠気、昏睡など。急激に158より上がると時に脳静脈破裂も。高Naの鑑別は、まず尿浸透圧(尿崩症で血が濃縮されている場合などは血中Na↑、血中浸透圧>尿浸透圧↓)




酸塩基平衡(血液ガス分析)

①まずpHをみて、7.35~7.45を外れていたらアシデミアかアルカレミアであるが、これが正常範囲でも症状としてアシドーシスand/orアルカローシスをきたすことはあるので留意しておくこと。

②次いでPaCO2とHCO3をみて、呼吸性or代謝性か、③次いで代償の有無、④AG(補正AG)と補正HCO3を計算する。

*pHが正常であっても、必ずAGは計算すること。→AGが14以上だったらその時点ですなわちAG開大性代謝性アシドーシスを想定する。AG開大性代謝性アシドーシスの際は、次いで補正HCO3を計算する。補正HCO3(=HCO3+ΔAG)が26より大きければ、代謝性アルカローシスも合併していると考える。p143

Henderson-Hasselbalchの式(*pHを求めるための式としては使わないことに注意)
pH=6.1 + log (HCO3-/0.03 x PaCO2)
・pHはHCO3が分子・PaCO2が分母(で対数をとる)と覚えておけば十分。
・つまり、低pH = HCO3が低い and/or CO2が高い
・ 高pH = HCO3が高い and/or CO2が低い。
代償が適切か、
丁寧に考える。
p130-p134
①代謝性アシドーシスの場合
 ΔHCO3- = HCO3-正常値(=24mEq/L) – HCO3-
とすると PaCO2は1.2xΔHCO3-だけ低下するのが適切な代償である。

たとえば、HCO3が14だったら、ΔHCO3=10だから、PaCO2の想定の低下は12くらい(10~14とか)。大きく外れていたら別の病態を考える。

【AG】通常の検査で測定されない陰イオン。*AGは増加するのが問題。AG>14の場合をAG開大性代謝性アシドーシスという。 AG=Na – (HCO3+Cl)  (=正常値は12くらい)

②代謝性アルカローシスの場合
 PaCO2は0.7xΔCO3だけ上昇するのが適切な代償である。
(PaCO2による代償は、①のように、下がるときのほうが大きいと覚えてもよさそう)

③呼吸性アシドーシスの場合(HCO3による代償は遅い。2日を基準に急性と慢性がある)
HCO3は急性では0.1xΔPaCO2、慢性では0.3xΔPaCO2上昇するのが適切な代償である。
この時も、±2の範囲なら正常、±4を超えた動きがあれば他の病態も考える。

④呼吸性アルカローシスの場合(HCO3による代償は同じく遅い、同上)
 HCO3は急性では0.2xΔPaCO2、慢性では0.5xΔPaCO2低下するのが適切な代償である。

シェアする

フォローする