内科の緊急入院

優先度は下がるが、画像所見(例えば胸部Xpの読み方)の一通りのまとまった教科書くらいは買った方がよいかも。
呼吸器系の一般疾患(COPDと気管支喘息その他まぎらわしいもの)を復習せよ。
脳神経についての画像は p169にまとまってある。
その他に、腎障害、Na異常

肺炎

・市中肺炎(CAP)と、院内肺炎(HAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP)を区別する。市中肺炎では細菌性か非定型か。
・市中肺炎の入院適応についてはA-DROPと敗血症の有無。
・院内肺炎、医療・介護関連肺炎では患者背景も重要。
・結核は必ず念頭に置く(特にニューキノロン系は安易に使用しないこと)。感染症以外も想定すること。

細菌性肺炎肺炎球菌、インフルエンザ杆菌、モラクセラ → グラム染色
 *特定前のエンピリック治療についてはp130に記載されている。
非定型肺炎
 鑑別ポイント
マイコプラズマ、レジオネラ、クラミドフィラ → グラム染色
*以下の項目を確認(4項目以上満たせば非定型肺炎が疑われる。ただしレジオネラを除く)
①年齢<60歳 ②基礎疾患がないか軽微 ③頑固な咳 ④胸部所見が乏しい
⑤痰がない、あるいは迅速診断で起炎菌が証明されない ⑥WBC<10000

*バックグラウンドが鑑別に重要であり、そのリストはp128。
市中肺炎の入院適応敗血症(qSOFA)とA-DROP(3点あれば重症→入院は必須(1,2点も入院はありうる))
(A-DROPの4点以上はICU治療となる)
Age(男≧70, 女≧75)、Dehydration(BUN≧21または脱水)、Respiration(SpO2≦90)
Orientageion、Blood Preasure(収縮期血圧≦90mmHg)
抗菌薬の治療判定薬剤投与後3日後に行い、体温・咳嗽・喀痰量の3項目中2項目以上みたせば改善ありとする。治療が奏功している場合は7~10日(菌血症を伴う場合は14日)抗菌薬を継続する。
感染以外に間質性肺炎・好酸球性肺炎・過敏性肺炎・薬剤性肺炎・放射線性肺炎・COPD増悪・心不全・ARDS・肺胞出血・肺癌・リンパ増殖性疾患

p136あたりに胸部Xpの読影についてやや詳しめのまとめ。改めて勉強しておくべき。

喘息発作・COPD、心不全、脳梗塞、けいれん

・Weezeの鑑別

Weezeの鑑別喘息発作・COPD増悪・心不全
・p41の表を参照するとよい。
心不全の
Framingham criteria
大症状2つ、または大症状1+小症状2
 p149
急性心不全の治療収縮期血圧を指標としてクリニカルシナリオに基づき初期治療 p151
病態把握にはwet/dry, cold/warmが重要で、治療を考える。
急性心不全の原因「FAILURE」で鑑別 p157
Forgot med(怠薬)、Anemia, Arrhythmia(貧血、不整脈)
Infection, Ischemia, Infarction(感染、狭心症、心筋梗塞など)
Lifestyle, Upregulator(甲状腺疾患や妊娠、脚気心など)
Rheumatic valve or valvular diseases(弁膜症)、Embolism(肺塞栓症)
脳卒中と類似の症状外傷、感染(髄膜炎や脳炎)、腫瘍、代謝性疾患(高血糖・低血糖)
高血圧性脳症、心停止後蘇生後脳症、ショックと中枢へ定款瘤、中毒、粘液水腫、尿毒症、肝性脳症、精神障害(解離性障害)
*片麻痺などあれば脳梗塞らしい。高齢者では訴えがはっきりしないことも多いので注意。
TIAを疑う際ABCD2スコアで、脳卒中発症リスクを推定
Age(≧60)、血圧、臨床所見、症状の持続・糖尿病、の5項目
脳卒中と診断したのち発症時間(t-PA適応の4.5時間以内か)の確認と、NIHSSで重症度をすぐに点数化する。
・脳梗塞は心原性・アテローム血栓性・ラクナ。
t-PA不適応の)
治療の概念
ペナンブラを救うこと。ペナンブラは、周辺の虚血があるがまだ細胞が死んでいない状態
けいれんの対応ABC確保しながら、けいれんを止める。
・咬舌に注意して場合によっては口腔エアウェイ、鼻腔エアウェイ
・マスク(ジャクソンリース付)で酸素投与、SpO2モニター
・心電図と血圧モニター
→ジアゼパム(ホリゾン)1/2A(5mg)の静注。ラインがなければ筋注または注腸
(1分で効果発現する。しなければ次の対応)
低血糖の除外ができていないときは50%ブドウ糖50mLとVB1 100mgの静注。

→止めたら再発予防の投薬
(フェニトイン・ホスフェニトイン・レベチラセタム・フェノバルビタール、など)p176

・原因検索を行う
(*失神との違いは、誘因の種類・前駆症状があること・通常は両側・咬傷・尿失禁・発作後頭痛や筋痛・発作後のもうろう・1~2分(>失神では数秒))
M: metabolic(尿毒症・低血糖・高血糖・肝不全・電解質異常)
I:infection, infarction(脳炎など。TIAも)
T: Toxic, Trauma, Tumor(薬物中毒など)

AKI、低Na血症、肝炎、膵炎

腎機能障害をみたら(Cr上昇をみたら)
*GFRと比べるとCr変化は緩やかなことは注意
以前の値を確認し、慢性か急性か鑑別
AKIであれば、腎後性、腎前性、腎性の順に鑑別
(Naのほか尿中の円柱もヒント。薬剤性にも注意)
緊急透析の適応「AIUEO」
アシドーシス、薬物中毒、尿毒症、電解質異常、溢水(oxygen, overload
低Naをみたらまず血漿浸透圧を測定する(低Na血症は低張性/等張性/高張性に分類)
*治療対象となるのは低張性Na血症のみ
(血漿浸透圧低下による脳浮腫リスク)
・血糖値が上昇するとNaは低下する。
・急速な補正は脱髄を起こす
(始めの24hで10mEq/Lまでの上昇に抑える。48hで18mEq/Lまで)
低張性低Na血症の原因①水中毒 ②溶質摂取不足 ③SIAD(H)
(①②を否定後尿中Na濃度を評価する)
*フローチャートはp198
高Kをみたらまず心電図を取る。偽性は除外(採決時の溶血など)。
再検の場合は動脈ガスはアシドーシスや血糖もわかるため良い。
K>6mEq/L または心電図変化がある場合は治療開始:
 グルコン酸Ca、GI療法(効果は一時的)
 フロセミド+生食/重炭酸Na(排泄を促す)
 陽イオン交換樹脂(腸管からの排泄を促す)
 血液透析(すみやかに改善する)
肝胆道系酵素の異常をみたら鑑別のためALT, AST, ALP, T-bil, γ-GTPを確認する。
ただし、AST, ALT>1000IU/Lでは特にウイルス性、薬剤性、虚血性肝炎
①AST, ALT優位
 ウイルス性肝炎/アルコール性肝障害/薬物性肝障害/自己免疫性肝炎/血管性(虚血性/Budd-Chiari/うっ血肝)/ヘモクロマトーシスやWilson病
②胆道系酵素優位(画像で胆管拡張)
 胆石/胆管癌/膵癌/PSC(原発性硬化性胆管炎)
③胆道系酵素優位(胆管拡張なし)
 薬剤性/肝硬変/中心静脈栄養/敗血症/PBC(原発性胆汁性胆管炎)/PSC
急性肝炎と診断した後劇症化するかどうかが重要
・劇症肝炎とは、症状発現後8週以内に、肝性昏睡II度以上の脳症+PT時間40%以下

劇症肝炎の予知式:
λ=-0.89+1.74 x 成因(下記) + 0.056 x T-bil -0.014 +ChE > 0となれば劇症化リスクが高い。(成因はHAV, 急性HBVなら1、そのほかの肝炎ウイルスなら2を代入)
*他にも、AST>ALT, 直接ビリルビン/総ビリルビン < 0.7 など。
*劇症肝炎では移植可能な施設での集中治療管理が必要で、ゆえに判断が重要。
急性肝炎の治療安静・補液・食事
・重症ではエネルギー消費↑ 肝での糖新生↓→低血糖(輸液に糖を含める)
肝性脳症の対応*肝硬変であっても、必ず他疾患を除外すること。
①原因の除去 ②蛋白制限 ③ラクツロース(アンモニア吸収の抑制)
原因:
1)窒素負荷の増加(消化管出血、蛋白の過剰摂取、便秘)
2)電解質代謝異常(低K、アルカローシス、低酸素、低Na、脱水)
3)薬物、4)感染(特にSBP(特発性細菌性腹膜炎)死亡率20%の緊急疾患)
*発熱+腹痛+腹水→SBPを想起すること。
急性膵炎の鑑別*アミラーゼは特異度が低くそれだけでは他の可能性が高い(胆石や急性腹症)
(膵性アミラーゼ(P-AMY)やリパーゼが特異度が高い)
診断基準には①上腹部に急性腹痛発作と圧痛、②血中または尿中に膵酵素の上昇
③エコー、CT、MRIで膵に急性膵炎に伴う異常がある。
急性膵炎の重症度判定p225に記載「70y BLS CPa」
急性膵炎の治療*急性膵炎全体の死亡率は2.1%(おもに循環不全による多臓器不全)
上記をふせぐために、補液により臓器血流を保つ(量の調整は難しい)。
その他=疼痛コントロール・感染予防・栄養管理・蛋白分解酵素阻害

オンコジェニック・エマージェンシー

構造上の原因、代謝性、治療関連合併症などで緊急の対応が必要になることがある。

背部痛・下肢脱力悪性腫瘍による脊髄圧迫(MSCC, malignant spinal cord compression)
・神経障害は不可逆の可能性があり緊急性が高い。
・腫瘍患者の5~10%に起こると言われる。
・脊髄圧迫の20%はがんの初発症状として起こる。肺癌/乳癌/MM/悪性リンパ腫/前立腺癌など
・疼痛→下肢の運動/感覚症状。椎体の叩打痛、MMT、反射、感覚などの評価を行う。
・検査は通常MRI、治療はステロイド、放射線、手術
顔面浮腫上大静脈症候群(*指摘されていない悪性腫瘍の存在も想定すること)
・安静と酸素投与を行う。放射線照射は未診断時は(診断をマスクする可能性あり)注意
・ステント留置はすみやかに
高Ca血症がん患者の20~30%に高Ca血症が随伴する。
①腫瘍随伴性体液性高Ca血症(HHM)80%を占める。固形がんや非ホジキンリンパ腫
②局所性骨融解性高Ca血症(LOH、骨転移(乳癌が多い)やMM)
③1, 25-ジヒドロキシビタミンD(腫瘍細胞による産生)
④異所性PTH産生細胞
治療の基本は、補液・カルシトニン・ビスホスホネート
尿酸値高値腫瘍崩壊症候群により、尿酸↑ K↑ P↑ 急性腎不全、致死的不整脈、けいれん、など。
・治療は、補液、尿酸値コントロール(ラスプリカーゼ, 尿酸分解)、電解質補正

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